プチコラム28 デザインという言葉の罠
「デザイン」と聞くと、オシャレで素敵なイメージを持ちますよね。そのため、悪く考えれば「デザイン」と名前をつければ売りやすくなります。
その結果「デザイン住宅」という言葉が流行って10年以上が経ちました。
全国各地で設計の指導をしていますと、それらのデザイン住宅での劣化や不具合、多額のメンテナンスコストといった悩みを多く聞くようになりはじめました。
(しっかりとその場所の気候風土に応じて設計され、物質としての劣化やメンテナンスの事を考えてつくられたデザイン住宅は別です。しかし、そういった本当のデザイン住宅は誰でもつくれるわけではないし費用も大きくかかりますので、残念ながら10棟に1棟もないのが現実で、インスタでよく見るようなローコスト系なんちゃってデザイン住宅が圧倒的多数をしめています)
普通につくっても(ノーメンテナンスの場合)住宅は20~30年経てば問題が起こります。
住宅も物質の集まりかつそれらを組み合わせていますから、世の中の他の物に比べればそれでもかなりの長寿命製品ですが、デザイン住宅が流行ってしまった頃、専門家の間では、その家の寿命はおそらく通常の家の半分が良いところだろうと懸念されていましたが、、やはりというか予想通りというかそうなってしまいました。
一生をかけたローンを組んで手に入れた念願の家。全国で相談を受ける方々から悲しみや喪失感が痛いほど伝わってきて、相談を受ける度に私も心が痛みます。
商品を売りたいがために簡単に「デザイン住宅」と言って適当な家を売ってしまっている売り手側の責任が重大ではありますが、契約書にはそこまで明記していませんので、それらを鵜呑みにして契約してしまった買い手側にも責任があります。というより、結果として泣き寝入りするしかなくなってしまいます。
住宅に限りませんが、現代はあらゆる情報が錯綜し飽和している時代。一歩間違えると最後に痛い目を見るのは自分自身ですので、どうか我々専門家をうまく使いながら自分と家族の未来を守っていって欲しいと強く願っています。